電解水、水素水、電解水素水、それともアルカリイオン水?実にさまざまな水の名称がありますね。どれも体によいとされていますが、具体的にはどのような違いがあるのでしょう。
私たちが水の種類と効果を分類したいとき、現時点では明確な基準は存在しません。体にいい水は薬ではなく、あくまでも健康食品に近い位置づけだからです。
とはいえ、あらゆる宣伝文句をうのみにしていては、よけいに頭が混乱してしまいます。そこで、「日本分子状水素医学生物学会」が定義する水素水の基準をベースに、電解水と水素水の違いをスッキリ仕分けしてみました。
日本分子状水素医学生物学会って?
正式名称は、「一般社団法人日本分子状水素医学生物学会」。設立は2016年ですが、2011年から毎年、水素医学のシンポジウムを行っていた団体です。理事長の太田成男氏は、水素研究の第一人者として知られています。
団体から学会になり、今後は医療現場における水素の研究だけでなく、人や動物の健康、農業や工業にも視野をひろげていくそうです。すでに、数多くの研究や臨床実験を行っています。
水素水の基準とは?
分子状水素医学生物学会が定義している水素水のポイントは2つあります。分子状の水素ガス(H2)が溶け込んでいること。そして、ph(ペーハー)が中性であることです。
水素分子以外の水素が溶け込んだ水、あるいはphが中性以外の水は、広い意味では水素水といえるかもしれませんが、学会の定義からは外れます。
溶存水素濃度と限界飽和量
水素水ならではの効果や効能を期待できるのは、溶け込んだ水素分子の濃度を示す「溶存水素濃度」が、0.8ppmから1.0ppmあることが基準です。
ここで注意したいのは、溶存水素濃度とは、実際に摂取するときの濃度のことであり、商品出荷時や未開封の状態ではないという点です。
たくさん充填しておけばいいんじゃない?と思いがちですが、残念ながら溶存水素濃度には限界があります。いくら大量に水素ガスを充填しても、フタを開けると水素はみるみるうちに飛んでしまうからです。
日常生活に適した温度と、特に気圧変化がないことを常温常圧といいます。常温常圧でフタを開けても、空気中に飛ばずに残っている水素は1.6ppmまでとされています。この数値を、「限界飽和量」といいます。
充填時の水素量を増やすことは可能ですから、メーカーによって開封前の表記に差があるのは当然です。ただし、限界飽和量は自然の摂理ですから差がありません。
ナノバブル製法という技術を使えば、限界飽和量を多少は抑えられるといわれていますが、開封後も1.6ppm以上の高濃度を維持できる、開けても減らない、沸騰しても大丈夫、そんなイメージ操作には注意が必要です。
水素の吸収にも限界がある
私たちの体が摂取可能な水素量についても知っておきましょう。水素分子に反応する体内の受容体(水素レセプター)には限りがあるため、しっかりと吸収できるのは0.4ppm程度です。残りの6割は、呼吸と一緒に排出されてしまいます。
この0.4ppmを効率よく吸収するためには、あらかじめ排出されるであろう6割を含めて、1.0ppmを取り込むことを目安にすればよいでしょう。
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水素水と電解水とアルカリイオン水の違い
電解水といえば、掃除用スプレーを思い浮かべる人が多いかもしれません。掃除用の電解水には2種類あり、食塩水をプラスとマイナスに電気分解してから、プラス極で作られる弱酸性の水と、マイナス極で作られる強アルカリ性の水があります。汚れの質で使い分けますが、どちらも洗剤として人気があります。
さて、対する飲料用の電解水は、水道水をプラスとマイナスに電気分解し、マイナス極で作られるアルカリ性の水をさしています。ひと昔前、アルカリイオン水と呼ばれるペットボトルが、たくさん売られていましたね。
要するに、電解水とアルカリイオン水は別のものではなく、電解水のひとつの形がアルカリイオン水ということになります。アルカリイオン水は、乳児や老人、薬を飲むには適していません。健康な成人であれば、水道水のカルキ臭が抜けておいしいですし、胃酸過多や下痢などの胃腸トラブルを改善してくれます。
電解水と水素の関係
電気分解によって作られた電解水は、いまやアルカリイオン水ではなく、電解水素、還元水素、活性水素などと呼ばれています。これは、一時は脚光を浴びたアルカリイオン水ブームが終わり、水素水ブームが訪れたからに他ならないでしょう。
電解水にも水素は含まれていますから、広い意味では嘘ではありません。しかし、電気分解による溶存水素濃度は0.1ppmから0.3ppm程度です。日本分子状水素医学生物学会が基準にしている0.8ppmには届いていません。また、phが中性という条件からも外れています。
ちなみに近年では、phが中性の電解水も注目を浴びています。こちらは、歯科医院に備え付けられている患者さんのうがい用、医療器具の消毒や洗浄用としてなので、そもそも飲料には向きません。ただ、やはり微量の水素は含まれているため、広い意味では水素水といえます。
どうして日本分子状水素医学生物学会が基準なのか?
最後に、どうして日本分子状水素医学生物学会を基準にすべきかを説明します。この学会の正会員は、当然ながら現役の研究者や医療従事者がメインです。しかし、学会のポリシーとスタンスがしっかり伝わるのは、会を支える賛助会員の入会資格です。
賛助会員には、電解水や水素水の各メーカー、健康食品の会社が名を連ねています。案の定、お金さえ出せばスポンサーになれるんだなあと思いきや、実はかなり高いハードルがあるのです。
賛助会員になるには、理事か監査の推薦が必須で、「非科学的な製品と関係のある法人は賛助会員にはなれません」と明記されています。実際に商品のパンフレットやキャッチコピーもチェックされます。
その上、非科学的な製品を販売している法人とは、同じテレビチャンネルで販売活動することすら好ましくないという警告文まで掲げています。
このように、研究者とメーカーがお互いを監視し合うというスタイルは、私たち「購入する側」にとっては非常に理想的です。少なくとも、一般人の口コミや特定の会社のホームページよりは、シビアに精査された情報を更新しているのです。
水素水の賢い選択のまとめ
今も次々に新しい水素水や水素に関わる商品が登場しています。目移りしてしまうのなら、自分が水素水に何を期待しているのか再確認してみましょう。
健康な生活を底上げしたいのか、特定の効能に期待しているのか、持病の回復に寄与させたいのか。水素水に求めているものをはっきりさせることは、きっと賢い選択につながるはずです。